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楽天S&P500と楽天オルカンが新登場
2023年10月27日に「楽天・S&P500インデックス・ファンド」(楽天S&P500)と「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド」(楽天オルカン)の2商品が設定されました。
特長は信託報酬の低さです。設定当初から業界最低水準でしたが、11月8日付の楽天投信投資顧問からのプレスリリースで、さらに12月1日から以下の表のとおり信託報酬が値下げされることが発表されました。
【旧】設定当初の信託報酬 | 【新】12月からの信託報酬 | |
楽天S&P500 | 0.09372% | 0.077% |
楽天オルカン | 0.05775% | 0.0561% |
さらにプレスリリースには、「当ファンド2本は、他社類似ファンドの運用コストに注意を払い、信託報酬については機動的に引き下げを行うことによって業界最低水準を目指してまいります」と記載されており、将来にわたって最低水準の信託報酬を維持するファンド運営方針が示されています。
なお、以降の記事では、2商品の信託報酬として12月からの新しい信託報酬を用います。
楽天投信残高ポイントプログラムが限定復活
楽天S&P500と楽天オルカンの新登場に合わせるように、投資信託の保有残高に応じてポイントが付与される「楽天投信残高ポイントプログラム」復活しました。
復活というのは、過去に一度廃止された経緯があるためです。
2021年12月に同プログラムが廃止された際には、楽天経済圏の改悪ということでSBI証券へのNISA口座移管という動きが活性化しました。
SBI証券には同種サービスである「投信マイレージ」が健在であったためです。
今回の復活によってSBI証券の「投信マイレージ」に追いついたかというと、そうではありません。
復活した「楽天投信残高ポイントプログラム」の対象となる投資信託は、楽天S&P500と楽天オルカンの2商品に限定されています。
しかし、信託報酬が業界最低水準に低く設定されているこの2商品に投信残高ポイントを加味すると、実質的な信託報酬(=信託報酬-投信残高ポイント)は次のような超低コストになります。
信託報酬 | 投信残高ポイントを加味した信託報酬 | |
楽天S&P500 | 0.077% | 0.049% |
楽天オルカン | 0.0561% | 0.0391% |
低コストファンドが揃うS&P500系とオルカン系投資信託
新NISA開始前年となる2023年は、信託報酬の低いS&P500系とオルカン系投資信託が相次いで登場しました。
また、「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続けるファンド」を掲げた投資信託であるeMAXIS Slimシリーズは、信託報酬を下げることで対抗してきました。
この競争の結果、S&P500系とオルカン系投資信託の信託報酬は、他指数の投資信託とは比較にならないくらい低コストになったのです。
ファンド | 運用会社 | 信託報酬 | 純資産額 (百万円) | 運用年数 |
eMAXIS Slim S&P500 | 三菱UFJ | 0.09372% | 2,802,691 | 5年 |
SBI・V・S&P500 | SBI | 0.0938% | 1,170,476 | 4年 |
たわらノーロード S&P500 | アセマネOne | 0.09372% | 3,057 | 0年 |
はじめてのNISA・S&P500 | 野村 | 0.09372% | 761 | 0年 |
楽天S&P500 | 楽天 | 0.077% | 1,436 | 0年 |
ファンド | 運用会社 | 信託報酬 | 純資産額 (百万円) | 運用年数 |
eMAXIS Slim 全世界株式 | 三菱UFJ | 0.05775% | 1,616,889 | 5年 |
Tracers MSCI オールカントリー | アセマネOne | 0.05775% | 1,927 | 0年 |
はじめてのNISA・全世界株式 | 野村 | 0.05775% | 1,161 | 0年 |
楽天オルカン | 楽天 | 0.0561% | 979 | 0年 |
新NISAでは、これらの低コストファンドがしのぎを削っており、最も低い信託報酬を設定している楽天S&P500と楽天オルカンも、圧倒的な存在ではありません。
純資産額で比較されると、先発のeMAXIS Slimシリーズの優位が際立ちます。
楽天S&P500と楽天オルカンが、後発商品の弱点である純資産額の少なさを早期に解決するためには、資金流入を促進する工夫が必要となりますが、これ以上の信託報酬の低コスト競争は厳しいでしょう。
eMAXIS Slimシリーズが対抗値下げする可能性もあります。
楽天S&P500と楽天オルカンはiDeCo対象商品に追加されるか
楽天S&P500と楽天オルカンの信託報酬は最低水準に設定されていますが、新NISAでは同水準のライバルファンドが多く、後発ゆえに純資産額勝負になると負けてしまいます。
一方、楽天証券iDeCoの対象ファンドと比較すると、楽天S&P500と楽天オルカンの信託報酬は圧倒的に優勢です。
ライバルになりそうな「楽天・全米株式インデックス・ファンド」(楽天VTI)や「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」(楽天VT)と比較すると以下のようになります。
ファンド名(信託報酬) | ||
米国株式 | 楽天VTI(0.1617%) | 楽天S&P500(0.077%) |
全世界株式 | 楽天VT(0.1914%) | 楽天オルカン(0.0561%) |
これだけ差があると、楽天S&P500と楽天オルカンをiDeCo対象商品に追加したならば、新規ユーザーはもちろん、楽天VTIや楽天VTを運用中の既存ユーザーも商品をスイッチングすることが予想され、楽天S&P500と楽天オルカンの弱点である純資産額の早期拡大が期待できます。
楽天側からすると楽天VTIや楽天VTとの共食いになってしまいますが、これらのファンドの信託報酬は設定当初は格安でしたが現在では相対的に割高であり、このままだといずれ他社ファンドや他社iDeCo口座へ流出する可能性もあるため、楽天S&P500と楽天オルカンのiDeCo追加はあり得ると思っています。
そう思っていたところ、2023年10月31日から楽天証券iDeCoに2商品追加されたとのニュースを見つけました。
追加された商品は、・・・アクティブファンド2本・・・、ちがう、それじゃない。
楽天証券の新NISAへの切り札として設定されたであろう楽天S&P500と楽天オルカン。
信託報酬は申し分なし。投信保有残高に応じたポイント還元もある。
不足しているのは、純資産額がもたらすファンドへの安心感。
iDeCo対象商品に追加して、早期に純資産額を拡大できれば、先発のeMAXIS Slimシリーズに対抗できるかもしれません。
ハイレベルな競争で新NISAを盛り上げて欲しいですね。
追記:楽天S&P500と楽天オルカンがiDeCo対象商品に追加されます!(2024.1)
本記事(2023年11月8日投稿)で予想していた楽天S&P500と楽天オルカンのiDeCo対象商品への追加が、2024年1月30日に実現することになりました。
これにより、ここ数年にわたりeMAXIS Slim S&P500とSBI・V・S&P500の二強時代だったS&P500投資信託をめぐる状況は一変します。
詳しくは以下の記事で説明しますので、ぜひご覧ください。
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