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はじめに
私がパニック障害を発症してから20年が過ぎました。
ただ、20年ずっと苦しかったわけではありません。
振り返ってみると、時々調子を崩すことがありながらも、長期的には右肩上がりに改善してきています。
最初の頃はうつ症状が大変で薬に頼る日々でしたが、認知行動療法を積み上げていくうちに自然と頓服薬の使用頻度も減り、ここ数年は処方を停止してもらっています。
薬に頼らない方法として、呼吸法等の技法や飛行機・電車を快適に過ごすための道具を使いこなせるようになったことが大きいです。
パニック障害の不安フェーズには経験上、乗ることが決まってから前日までの予期不安、当日搭乗・乗車する前後の不安、この2つに区分できると思います。
以下では、それぞれのフェーズの特性に応じたグッズ等を紹介しますので、ご参考にしていただければ幸いです。
普段からの予期不安解消に役立つグッズ
呼吸法
普段は無意識にしている呼吸ですが、意識的に呼吸を止めたり、深呼吸によって吸う息の量を調整したりもでき、意識的にも無意識的にも行える二面性をもった
唯一の生理機能が呼吸です。
近年、呼吸の仕方を変えることで脳やメンタルまでコントロールできることが科学的に解明されてきました。
しかも呼吸法は、特別な道具を必要とせず、場所も選びません。
いつでも、どこでも、思い立ったら実行できる呼吸法こそ、最適のパフォーマンスアップ法なのです。
呼吸がパフォーマンスを変えられるのは、自律神経のセンサーが横隔膜にあるからです。
深い呼吸で横隔膜を動かすことでアクセルのような働きの交換神経から休息と修復を担うブレーキの働きをする副交感神経にスイッチが切り替えられます。
そのため、ストレスが軽減され、短い時間でリフレッシュし、思考も変わって集中できるようになります。
緊張している時は息を吸うことへ意識がいくことがありますが、実は息をゆっくり吐き出すことがリラックスには大切です。
本書で紹介されている4・4・8呼吸法は鼻呼吸を以下の手順でおこなうものです。
- 4秒かけて息を吸う
- 4秒息を止める
- 8秒かけて息を吐く
他にも目的に応じてCO2呼吸法やベース呼吸法も紹介されています。
いずれも、飛行機・電車に乗って急激な不安を感じてから慌ててやろうとしても上手にはできませんので、普段の余裕のある時からしっかりと練習をして、体に覚えさせると良いでしょう。
練習によって普段の不安レベルを下げておくことが、予期不安の解消にもつながります。
筋弛緩法
筋弛緩法とは、体の各部分の筋肉の緊張を緩め、身体的な緊張を自分で調整するリラクゼーション法です。
ハーバード大学で神経生理学を研究していた、E.ジェイコブソン博士が1908年に創始したものです。
自律神経系の働きによって起きた緊張は、意識的にとろうとしてもなかなかとれるものではありませんが、この方法は意識的に緊張を解く方法として工夫されているものです。
基本的には、以下の手順でおこなうものです。
- 体の各部位の筋肉を緊張させる(力を入れる)
- 体の各部位の筋肉を緩める(リラックスする)
この筋弛緩によって、大脳の興奮状態が落ち着きます。
リラクゼーション法として、この筋弛緩法と呼吸法がありますが、2つを組み合わせることは大変有効です。
先に筋弛緩法で体の緊張をとっておくと、呼吸法の効果が発揮されやすいです。
筋弛緩法も呼吸法と同様、飛行機・電車に乗って急激な不安を感じてから慌ててやろうとしても上手にはできませんので、普段の余裕のある時からしっかりと練習をして、体に覚えさせると良いでしょう。
練習によって普段の不安レベルを下げておくことが、予期不安の解消にもつながります。
長編小説
読書は旅の友。本の世界への没入感が、予期不安などの邪念に入り込む余地を与えません。
ただし、パニック障害を前提とした読書であれば、生半可な没入感では、本を開いても文字が頭に入ってこないでしょう。
また、まだ読み込んでおらず世界観に入っていけてない本、あるいは十分に読み進めていて残りページが少ない本、これでは困ります。
なので、私は自分の好きなジャンル(歴史)の長編小説(数冊に及ぶ)を選んで普段から読んでおき、いざ飛行機・電車となったときでもスムーズに本の世界の中へ入っていける、なんなら早く席に座って続きを読みたい、そう思えるような作品を用意するようにしています。
デカフェ
コーヒーは日常生活における気分転換の定番アイテム。
ただ、パニック障害にとってはカフェインが気になるところ。
このスタバのデカフェは、コーヒーらしい気分転換効果はそのままに、カフェインレスなので、夜にくることがある予期不安に対しても安心して対応できました。
元々コーヒー好きだった方にとっては、パニック障害への影響を考慮して、カフェインを制限するのはストレスだと思います。
カフェインも良くないですがストレスも当然良くないので、工夫してパニック前の生活の質を維持できるようにしたいですね。
マッサージシート
予期不安がある時、体操・筋トレ・ジョギングなど能動的に体を動かすのが苦痛になることがありました。
こんな時、温泉などにおいてあるマッサージチェアが家にあればなあと、思ったことがよくあります。
気分が乗らないときでも、受動的に座っているだけで体のコリをほぐし血行を良くしてくれるマッサージチェアは理想的なアイテム。
ただ、マッサージチェアは数十万円しますし、なにより家に置くには大きい家具です。
そこで私は、比較的安価で場所を取らず、それでいながらマッサージチェアと同等な効果が得られるマッサージシートを買いました。
初めて使った時に「このシートに座ったままなら、飛行機も新幹線も乗れる」と心底感動したのを覚えています。
それから10年以上経ちましたが、未だに生活に欠かせない存在です。
年齢を重ねるとパニック障害だけではなく、体のあちこちにコリが出てくるので助かっています。
ご紹介したマッサージシートの効果は次のとおりです。
- 疲労回復
- 血行をよくする
- 筋肉の疲れをとる
- 筋肉のこりをほぐす
- 神経痛、筋肉痛の痛みの緩解
比較対象となるマッサージチェアが全身を対象としているのに対し、マッサージシートは主に肩からお尻までが対象です。
しかし、それを補って余りある価格と小型軽量。
マッサージに通うより安いですし、予約や施術などで人に気を使うことなく、思いついたときに気が向いた時間だけ、マッサージシートに身をゆだねられるのは素敵ですよ。
飛行機・新幹線内の不安解消に役立つ携帯グッズ
エッセンシャルオイル
不安解消のためには、五感が快適であることが大切です。
五感のうち、香りで癒してくれるのがエッセンシャルオイル。
中でもオレンジの甘くフルーティーな香りは、脳神経の緊張を解して心を落ち着かせる効果があります。
使用する際には、ハンカチなどに数滴含ませて、顔もとに自然に寄せたハンカチの香りを鼻から静かに呼吸します。
実際に飛行機・電車で使う前に、練習しておくと安心です。
呼吸法と併用して香りの心地よさを愉しむことで、より大きな効果を期待できます。
ツボ押し器
パニック障害のカウンセリングで、「不安に集中せず、自分の外に気を向ける」ため、ツボ押しなど感覚を使うことが有効だと教わりました。
五感のうち、触覚です。
認知行動療法で電車トレーニング中に、緊急停車となったことがありました。
不安感が高まってきたのでツボ押し器で手のひらのツボを押したら、気持ちの集中が不安感からツボへの刺激に分散してくれて、徐々に焦りが収まってきました。
すると周りも見えてきて、さらに不安から気が逸れていったのです。
この時は咄嗟の出来事で、すでに呼吸が乱れていて余裕が無かったのです。
不安対処法はいくつかありますが、それぞれ特徴があるので、複数手段を持つのはとても有効であることを経験しました。
ツボ押し器にはいろいろな種類がありますが、触感が良い木製のツボ押し器は、握っているだけでもリラックスしてくるのでおすすめです。
蒸気でホットアイマスク
不安解消のためには、五感が快適であることが大切です。
五感のうち、目を癒してくれるのが蒸気でホットアイマスク。
意外と明るい飛行機・新幹線の照明から光を遮蔽してくれます。
装着してから程なく、蒸気と温感で緊張感がじんわりとほぐれていきます。
ほのかなラベンダーの香りも心地よく、眠りに誘うのです。
搭乗・乗車してすぐに装着して眠りにつくのもいいですし、スマホ等の使用で目が疲れた際の休憩にもおすすめです。
ネックピロー
パニック障害を抱えている人にとって、できれば交通機関は眠りにつき、気がついたら到着していたいもの。
飛行機・新幹線のヘッドレストだけでは、頭や首の位置が安定せず、快適・継続的な睡眠に支障があります。
そのような方には、携帯型のネックピローがおすすめです。
ネックピローを選ぶにあたっては、ポンプ式であることを確認してください。
枕形状のまま持ち運ぶのは不便なので。
飛行機・新幹線で使うには、普段は空気を抜いてポーチに収納し、使う時だけ空気を入れるポンプ式が便利です。
乗り物酔い止め
乗り物酔いのような不調があると、そんな状態で脱出不可能な乗り物に乗るなんて!という予期不安や発作を誘発しやすくなります。
このため、飛行機・電車に乗る際は酔い止めを携行することをおすすめします。
できれば即効性の高い液体タイプが望ましいですが、飛行機の場合は持ち込めない可能性があるので錠剤も準備するとよいでしょう。
GABAチョコ
甘いものは気分転換になります。
特にGABAチョコはセロトニン効果が期待できるので、さらに安心ということで愛用しています。
ウイダーinゼリー
空腹を覚えると不安を誘発することがあります。
特にパニック障害の人は不安と闘うため頭をものすごく使っているため、低血糖になりやすいです。
そして、低血糖がパニック発作を誘発することがあります。
このようなことを避けるため、私は軽易かつ迅速にブドウ糖を補給するグッズとして、ウイダーinゼリーを携帯しています。
携帯トイレ
混んでる電車や高速道路などでトイレが必要になった時に、すぐには使えないという状況が起こる可能性があります。
こういう不快感や焦燥感は、予期不安やパニック発作を誘発する原因となるので、事前に携帯トイレを準備しておくことをおすすめします。
公共交通機関の中で携帯トイレを使って排泄することは考えにくいですが、最後の手段を御守り的に保持していることは、発作の抑止につながるため大切です。
基本的に御守りとして携行するため、個包装のコンパクトなものを紹介しております。
私もカバンの内側サイドポケットに入れていますが、個包装のマスク程度の大きさですので、携帯していて気になることはありませんでした。