新NISAでも米国高配当ETFは課税される
2024年から新NISAが始まります。
新NISAでは、従来のiDeCoやつみたてNISAのように投資信託を対象商品とする「つみたて投資枠」と、一般NISAのように株式も対象商品とする「成長投資枠」の2つの投資枠があります。
iDeCoやつみたてNISAでは購入できなかった高配当ETF、新NISAを機会に成長投資枠を使って購入しようとお考えの方も多いでしょう。
ところで、米国株を投資対象とする米国高配当ETFは、新NISAであっても課税されることはご存じでしょうか。
日米の高配当ETFを、新NISA口座で運用した場合の税率は表のとおりです。
分配金にかかる税率 | 売却益にかかる税率 | |
米国高配当ETF | 米国税:10% 日本税:非課税 | 米国税:非課税 日本税:非課税 |
日本高配当ETF | 日本税:非課税 | 日本税:非課税 |
米国は、株式等の売却益に対しては非課税ですが、配当金(分配金)は10%課税されます。
新NISAは日本の非課税制度なので、米国課税は対象外です。
加えて、日本が非課税になることによって、これまで特定口座では適用されていた二重課税調整制度や外国税額控除も新NISAでは対象外となってしまいます。
つまり、米国の10%課税は軽減されることなく適用されるのです。
他方、日本高配当ETFは、米国で課税されませんので、完全非課税となります。
このように新NISAの恩恵は、分配金に関しては日米差があることがわかります。
課税有無が日米高配当ETFの分配金に及ぼす影響
米国高配当ETFの分配金に対する米国10%課税は、日本高配当ETFで分配金を得ようとする場合と比較して、どのくらいデメリットがあるのでしょうか。
日本高配当ETFは信託報酬等の経費率が米国高配当ETFに比べ高い傾向がありますが、米国10%課税を含めて計算してみたら逆転もあるかもしれません。
なお、計算には日米の代表的な高配当ETFを数種類使用し、2023年4月時点の利回りと経費率を適用しています。
米国課税の影響度のみを明らかにするため、株価は全ての銘柄1万円と仮定し、為替は考慮しません。
分類 | 銘柄 | 計算 | 年間分配金 |
米国高配当ETF | VYM | 10000×((3.10-0.06)÷100)÷0.9 | 274円 |
HDV | 10000×((3.88-0.08)÷100)÷0.9 | 342円 | |
SPYD | 10000×((4.50-0.07)÷100)÷0.9 | 399円 | |
PFFD | 10000×((6.40-0.23)÷100)÷0.9 | 555円 | |
日本高配当ETF | 1489 | 10000×((4.75-0.28)÷100) | 447円 |
1577 | 10000×((3.77-0.32)÷100) | 345円 | |
2564 | 10000×((4.84-0.39)÷100) | 445円 | |
(参考:ADR銘柄) | BTI | 10000×7.52÷100 | 752円 |
JT | 10000×6.43÷100 | 643円 |
まとめ
日米の高配当ETFを、新NISA口座で運用した場合の米国課税影響度を計算してみました。
計算を通じて得られた結果をまとめると次のようになります。
- 米国10%課税の影響は大きく、米国高配当に経費率の差で劣っていた日本高配当ETFも十分選択肢
- 分配金利回り重視なら、新NISAで高配当ETFだけではなく、日米個別株、配当金非課税国のADR株に投資することも選択肢
- 米国高配当ETFのような幅広い分散や米国株中心の投資を重視するなら、投資信託の定期取崩しを分配金替わりにすることも選択肢
私の場合は、退職金運用ということで、年齢的にもメンタル耐性的にもあまりリスクを取りたくないので、新NISAの成長投資枠は日米高配当ETFのハイブリッド、つみたて投資枠はiDeCoやつみたてNISAと同様にインデックス投資で資産運用します。
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