資産運用

キャピタルフライト|新NISAの米国投資で進む円安インフレ対策5選

2024年2月15日

インフレ時代の資産防衛|円安相場の攻略法・インフレに強い資産とは

日米の金利差に起因するインフレの危機

日本経済は約30年間にわたりデフレ状態にありました。

デフレが続くと経済成長しないため、歴代政権は2%の物価上昇を伴うインフレを目標に異次元金融緩和やマイナス金利政策等を実施しましたが、デフレ状態は変わりませんでした。

日本をデフレからインフレに変えたのは、コロナ禍による世界規模の金融緩和です。

しかし、この金融緩和によって欧米のインフレは景気回復の域を超えて物価高による景気後退の恐れが出てきました。

このため欧米は、2022年以降インフレ対策として金利上昇(利上げ)させてきました。

この金融政策は功を奏し、欧米のインフレは2023年に鈍化し始め、現在は利上げを停止し、景気を分析しながら利下げのタイミングを計っている段階です。

一方で日本は、インフレ対策として欧米のような強力な金利上昇政策はしませんでした。

欧米が高金利、日本が低金利となった結果、記録的な円安が進行し、物価高になりました。

物価高になったので賃上げ、補助金(ガソリン等)、1年限定の定額所得減税をする方向ですが、こうやって物の量は変わらないのに円の流通量を増やそうとすると、一層インフレが進行することは自明です。

米国の金利引き下げ時期は、当初2023年後半との観測もありましたが、インフレが収束せず、高金利政策は長期化の様相を呈しています。

これに対し、日本は2024年初にもマイナス金利解除の観測でしたが、能登半島地震の影響もあり、解除見送り中です。

さらに、日銀はマイナス金利解除後も利上げへ転換することなく、金融緩和を継続する考えであることが報道されました。

このため、米国が金利を下げ始めても、日本が超低金利を維持するため、日米の相対的金利差は解消されず、引き続き円安ドル高は続きそうです。

キャピタルフライトに起因するインフレの危機

市場から資金が流出することを、キャピタルフライトと言います。

キャピタルフライトで日本円が米国に流出すると、円安ドル高となって輸入価格が上昇するため、急激なインフレに見舞われることがあります。

2024年に新NISAが始まり、投資先の過半が米国であったことから、結果として日本の資金が米国へ流出しました。

新NISAによる投資はまだ始まったばかりで、今後も米国投資の流れが継続するならば、看過できない規模のキャピタルフライトが起こることになります。

このままでは、円の価値がどんどん目減りするハイパーインフレ到来の可能性も否定できません。

そのような状況に備えるため、インフレ下における資産保有形態について考察していきます。

円安・インフレへの対策5選

①外貨預金・外貨建てMMFの保有

円が弱いならドルにしようといった発想で選択されるのが外貨預金です。

米国が高金利であることから、利子も期待できます。

また、ドルのままではなく、ドル建てMMFとして運用する方法もあります。

MMFとは短期債等の安全資産で構成されているファンドです。

米国が高金利なので、2024年2月時点で利回りは4.8%程度あります。

外貨はもちろん、MMFも流動性が高く、使いたいときにすぐ使えるのが特長です。

もちろん、為替の影響を受けるので円高ドル安となると不利になりますが、本記事では急激な円安ドル高を前提にしているので割愛します。

②米国株式の保有

米国のように、物価上昇で企業利益が増える「良いインフレ」の場合は、株価上昇し増配も期待できます。

一方、本記事で想定している日本は、物価上昇しているが企業利益は増えない「悪いインフレ(スタグフレーション)」となっているので、株価下落し減配の恐れがあります。

したがって、マクロ的にはキャピタルフライトの要因となってしまいますが、個人レベルの資産防衛では、米国株式の保有が重要となります。

③物価連動債券(インフレ連動債券)の保有

物価連動債券は、物価上昇に連動して元本が増加するので、資産価値を維持することができるインフレに強い資産となります。

円安ドル高の局面とはいえ、過度に資産がドル依存するのはリスクがあるかもしれません。

何より日常使用する通貨は円ですから、物価連動債券という形態で円建て資産を保有することは良い選択肢と思います。

④ゴールド

「有事の金」です。

ゴールドは普遍的価値を有する安定資産の代表格であることから、資産保有形態としては優れているでしょう。

ただ、利子も配当も生み出さない資産なので、保有比率を高くしすぎないよう留意しましょう。

⑤不動産

不動産はゴールドと同様に「物」です。

インフレによって円の価値が下がっても、物の価値は不変ですので、インフレに強い資産保有形態となります。

もちろん、資産としての普遍性や安定性はゴールドには及びませんが、売却益だけではなく賃料を生み出す資産なので、この点ではゴールドに勝ります。

不動産現物だけではなく、REIT(不動産投資信託)という選択肢もあります。

参考:借入金

住宅ローンのような金融機関からの借入金は、インフレで借入金の価値が下がることによって、返済が有利になる場合があります。

固定金利型ローンの場合は、ハイパーインフレで円が紙くず同然の価値になったとしても、返済額は固定のためローン負担が激減します。

変動金利型ローンの場合は、インフレで借入金の価値が下がると同時に、日銀がインフレ抑制のため金利上昇させる可能性もあるので、円価値下落と金利高が相殺した結果、金利高が勝ればローン負担が増加する恐れがあります。

しかし、本記事は「日米の金利差&キャピタルフライトによるインフレ危機」を想定しているので、そもそも日銀が金利を上げられるのであれば、我々もこのような心配をしなくて済むのです。

なぜ日銀が金利を上げられないかについては専門家の解説が多数ありますが、機会があれば当ブログでも取り上げてみたいと思います。

資産は様々な形態に分散して保有しましょう

今回はインフレに強い資産保有形態について考察しましたが、資産価値損失の危機はインフレだけではありません。

歴史的に見ても世界同時株安、国家財政破綻、不動産バブル崩壊等、様々なショックがありました。

これまで世界経済はいずれのショックからも必ず立ち直っていますが、回復に長い年数を要する前例も多々あります。

ハイパーインフレのような経済危機にあっても、所要の生活防衛ができるように、資産は様々な形態に分散して保有したいですね。

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